弁証法的行動療法
弁証法的行動療法(Dialectical Behavior Therapy, DBT)は、心理療法の一種で、特に境界性パーソナリティ障害(BPD)や感情調節の困難さを抱える人に対して有効とされています。アメリカの心理学者マーシャ・リネハンによって開発され、現在ではうつ病、摂食障害、PTSD、自傷行為、薬物依存などにも応用されています。
弁証法的行動療法(DBT)の特徴
DBTは、**認知行動療法(CBT)**を基盤としながら、「弁証法的アプローチ」と「マインドフルネス」を取り入れているのが特徴です。
- 弁証法(Dialectics)
- 「受け入れること(Acceptance)」と「変化すること(Change)」という対立する要素のバランスを取ることを重視します。
- たとえば、「自分を受け入れながらも、より良く変わることを目指す」という考え方が基本です。
- 4つの主要スキル(DBTスキルトレーニング)
DBTでは、感情や行動のコントロールを学ぶために、以下の4つのスキルを訓練します。
① マインドフルネス(Mindfulness)
- 「今この瞬間」に集中し、感情や思考を客観的に観察する練習。
- 判断せず、ありのままを受け入れることで、衝動的な行動を減らす。
② 苦悩耐性(Distress Tolerance)
- 強いストレスや感情的な苦痛に対処するスキル。
- 例:「気をそらす」「自己鎮静」「現実を受け入れる」などの方法を学ぶ。
③ 感情調節(Emotion Regulation)
- 強い感情をうまく管理し、コントロールする方法。
- 例:「感情を理解する」「ネガティブ感情を和らげる」「ポジティブ感情を増やす」など。
④ 対人関係スキル(Interpersonal Effectiveness)
- 人間関係を円滑にするためのスキル。
- 例:「断るスキル」「自分のニーズを伝える方法」「衝突をうまく解決する」など。
DBTの治療構造
DBTは、通常個別療法とグループ療法の両方を組み合わせて行われます。
- 個別療法:患者の個別の問題に対応し、スキルの適用方法を学ぶ。
- グループ療法(スキルトレーニング):4つのスキルを学ぶためのトレーニングを行う。
- 電話コーチング(必要に応じて):危機的な状況で、セラピストがリアルタイムでアドバイスを提供。
DBTの効果
- 自傷行為や自殺念慮の減少
- 感情のコントロール能力向上
- 人間関係の改善
- ストレスへの対処能力向上
DBTは科学的根拠のある治療法(エビデンス・ベースド・セラピー)として、さまざまな精神疾患に応用され、世界中で活用されています。